6. 脳・神経のメカニズム(2)
(3) 脳細胞の個数のチェック:
1) 大脳皮質全体の比較:
大脳皮質の細胞数140億個=14G個、 これに対して、たとえば DVDは
5−9GB/枚。普及している庶民的なパソコンのHDDの容量は1000GB(=1TB)前後。
したがって、大脳皮質の細胞数は機能の割に少なすぎる! 脳細胞の”回路”といっても、トランジスターによる回路とは異なり、細胞1個1個が、多くのトランジスターで構成された論理回路に匹敵することになる。
つまり、1個の脳細胞が、複数の情報を認識して処理し、「たましい」が脳細胞や コラム(それぞれの情報が関連する領域)に”重畳”しているようである! これは、脳や体に「意識」があるか無いかの程度によって、その”重畳”の程度が異なっているように見える。
2) 視覚野の比較:
ここで、視覚について、脳の情報伝達・処理 機能を、機械類と比較チェックしてみる。
光受容細胞は(ヒトの場合)1億個以上存在し、錐体(円錐体・明るい光用)は網膜の中心部で密に分布し、桿体(円柱体・暗い光用)は周辺部に多く分布する。これは固体撮像素子(CCDなど)200万〜600万画素よりも圧倒的に多い。網膜の細胞はサンプリングで光の情報を受け、神経節細胞の軸索は片眼で100万本程度であり、束になって眼球を出て間脳の腹側を経て、大脳の後頭葉へ送る。(眼球から出た直後、半分の軸索が左右に交差する) 撮像素子は1本の信号線で高速で処理するのに対し、視覚は100万本同時に(神経伝達速度で)処理して、その全体が「視覚認識」となる。
網膜からの神経信号は、まず 後頭葉の第一視覚野(17野・V1)から入って認知され、@ 頭頂葉へ向かう背側皮質視覚路と、A 側頭葉の下方へ向かう腹側皮質視覚路との 2つの視覚路を通って、次第に高次な情報処理が行なわれていくことが知られている。
後頭葉の第一視覚野(V1)では、ごく初歩的な形状認識(静止、または運動する対象に関する情報の処理、パターン認識)であるのに対し、背側皮質視覚路では
その視覚がどのような空間配置を取り、どこへ行くか(Where経路; 運動、物体の位置や、眼や腕の制御、到達運動に関連)、また、腹側皮質視覚路では
記憶にかかわって何が視覚として認識されたか(What経路; 認識や形状の表象(意識にのぼる映像)、長期記憶の貯蔵と関連)、という、より高度に連合された、しかも このように2つに明確に分けられた情報形態に 瞬時に発展する。 この情報は最終的には前頭葉まで伝わるといわれ、”What”、”Where”が、言語や論理という知的に構成された高度な情報にまで発展する。
・・・・ 脳の、大体この辺が、各段階で処理された「視覚」であると「認識」しているのであり、「知覚・認識」するのは、脳に重畳している「たましい」の領域である。
3) 細胞一個一個の情報処理機能:
よく研究された V1領域の一個一個の細胞に微細な電極を埋め込んでの発火実験(その細胞の膜電位が逆転し、興奮しているかどうかを調べる)では、サルやネコに見せた それぞれの形状に対する反応が、それぞれの細胞によって特化されていることが分かった。 さらに、サルの大脳・側頭葉寄りの下側頭回には、図形(+、−、l、などの単純な図形)に個別的に反応するニューロンが存在し、それらの細胞 が組み合わさって、より複雑な図形を識別する細胞が構成される、というような情報処理プロセスがこの領域にあると考えられている。つまり、細胞レベ ルで、すでに 反応する基本図形が決まっているらしい。(+ に反応するが、○、×、△には反応しないニューロンなど)
また、ネコの聴覚についても、特定の周波数領域の純音(時報のピー音)、ネコの威嚇の「シュー」という音、コオロギの「リンリン」音、など、様々な音
に特異的に反応するニューロンが見つかっている。
それらの知見などから、音楽の認識としては、大まかに以下のように推定することができる。
@各周波数、各音量の純音に特異的に反応するニューロンがある。
A次第に大きくなる音、小さくなる音などを識別するニューロンがある。
Bいろいろな「音色」(楽器の音色を含めて)に特異的に反応するニューロンがある。
C以上のそして、その他の様々なニューロンの組み合わせ、さらに、時間的な音声記憶の流れなどで、音・音楽を認識している。
したがって、細胞一個一個が、トランジスターで構成される回路セットに相当し、少ない個数でも多くの機能を果たしているということになる。そして、細胞一個一個の間を「たましい」の「意識」が走り回っていると解釈できる。
・・・・・・ まさに、”人間万事塞翁が馬”が転じて、”にんじん好きは 細胞が馬”!
* 低次の処理機能に特化されたサルの動体視力は、ヒトの10倍といわれる
(4) コンピューターに意識は芽生えるか?
システムが複雑でありさえすれば、それに「生命」が宿るのであろうか?
高速かつ正確無比に情報を処理するコンピューターについては、しばしばSF小説などによってその将来の極端な姿が想像されてきた。たとえば、
・ 万能マシンのアナロジー:
一定の公理と推論形式に基づいて、すべての数学的真理を証明可能にする数学システム
・・ ”数学的万能マシン” ・・
が完成した。このマシンは、証明可能命題を順番に組み合わせて新しい定理を証明し、次にそれらの定理を組み合わせて新しい定理を証明するといったような規
則的な方法で、全ての”真理”を証明し続けた。全ての数学の問題は、待っているだけで必ず解けるのである。
数学者に続いて、物理学者たちは、ついに、一般相対性理論と量子力学の統一理論を発見し、あらゆる法則を25の命題にまとめた。これらの法則もこの万
能マシンに組み込まれ、さらに、生物学、心理学、社会学などの理論も統一化され、”科学的万能マシン”が完成した。宇宙の正確な年代、エネルギーの効率的
生成、人口問題や食糧問題にも、全てこのマシンが計算し正確に答えることができる。この時点で、”科学的万能マシン”は、全地球上にネットワークを張り巡
らし、経済予想から気象情報までのあらゆる情報を処理した。
さらに、文学や絵画や音楽の芸術性に共通する法則が発見され、完全な美学システムが構成された。このシステムも科学的万能マシンに組み込まれ、つい
に、”普遍的万能マシン”が完成したのである。
もはや人間は何もする必要が無くなり、何かを知りたければ、聞くよりも早く万能マシンが答えた。なぜなら、このマシンは、すべての人間の行動を正確に
予想できるからである。マシンに敵対することはもちろん不可能である。全ての人間の考えていることも予測され、マシンが未然に防いだからである。”普遍的
万能マシン”は、地球を完全に制御し、全ての問いに答え、芸術作品を生んだ。もはや人間に残されているのはスポーツだけだった。(by.
ルドルフ・ラッカー、数学者)
ところが、この”万能マシン”は、ある日いっさいの問いかけに応じなくなった。すべての事についてこの万能マシンに依存する地球上は大混乱に陥った。
多くの技術者がマシンを隅から隅まで調べたが故障箇所は全く無い。あまりにも複雑なシステムなので、精神科医が治療に当たるが、それでも返答しない。そこ
に一人の技術者が来て、あることを言った。すると、途端に全システムが起動し、”万能マシン”は正常に戻ったのである。
・・・ その言葉は、”PLEASE”だった。。。(by. アイザック・アシモフ、SF作家・ユダヤ人)
しかしながら、ゲーデルの不完全性定理は、このような”万能システム”が論理的に不可能で
あることを証明している。”神”のような、無矛盾、かつ、完全な、理想的なコンピュータは存在しないのである。自然数論のシステムが完全ではない
ことが証明されているので、それを含む数学システム全体やアルゴリズムも不完全である。この意味で、不完全性定理は、我々にとって、永遠に謎が尽きることがないことを保証したといえる。
(* ♪コンピューターに守られたバベルの塔は不完全・・・)
・・・・・ システムに「いのち」を宿らせることは、「創造主」の「主権」による。
(5) 人の大脳の特異性:
人間には有って、他の動物には無いものとは何だろうか?(尻尾じゃないよ)
脳内の神経伝達物質には、ごく少量分泌される ドーパミンがあるが、それよりも大脳皮質全体やその下部に広く分布する グルタミン酸のほうがはるかに多い。このグルタミン酸は、学習や記憶を高め、嗜好や感情をコントロールする。 この
グルタミン酸の神経系での活動が低下することにより、精神障害を引き起こすといわれる。 (ただし、グルタミン酸は血液脳関門を通過できず、現在のところ
治療のため脳にグルタミン酸を注入する方法は判明していない)
特に、精神分裂症の前駆症状として、まわりで今までとは違った何か普通でないことが起きているような気がする(妄想気分)、それを言葉で表現できない(言語危機)、なんとなく頭が重い、周りの本来無関係な人たちが自分のうわさをしたり、自分に関係があるように思え、そのうち声が聞こえてきたりする。(関係妄想) 精神分裂症の幻覚は、声が聞こえてくるのが特徴である。(幻聴) また、自分の頭の中から考えが引き抜かれたり(思考奪取)、他人の考えが自分の頭の中に入ってくる感じ(思考吹聴)、自分の考えが他人に分かってしまう感じ(思考察知)、自分の考えが周りに放送されている感じ(思考伝播)、自分が他人に操られている感じ(させられ体験)などがある。
この、精神分裂症患者の脳の変化は、 1) 意識が低下し、自分のすべきことが分からなくなる;
前頭葉(能動的な働きの中枢)の働きの低下、 2) 幻覚・妄想; 右の前頭葉、または、左の側頭葉の働きの低下、によるとされる。
精神分裂症(慢性期の)によってグルタミン酸の活動が低下する領域(by.横浜市大、精神医、岸本教授)は、ブロードマンの脳地図では、
・ 前頭葉の10野(前頭極・額のあたり); 未来についての事柄、予測、計画
・ 11野(眼窩前頭皮質・眼球の上の回り込んだ皮質部); 意思決定の認知処理
・ 側頭葉の38野(側頭極・側頭葉の先端部); 言葉の意味記憶、顔の見分け、他者の心を推察
・ 頭頂葉の40野(縁上回・頂頭葉の後角部); (信仰?) ・・・ ただし、頭頂葉の機能は未だよく知られていない。体性感覚(1、2、3野)、空間認識以外の領域として”信仰”を挙げた
これらの分裂症に侵されやすい部分は、ヒトのみに存在し、サルの脳にはほとんど無い部分(by.「POPな脳科学」p199)であり、創造時に、ヒトの脳が発達して重量が増した部分と等しい。
・・・・・・ 人は「霊的」な生き物。 この 大脳皮質の”霊的アンテナ部分”は、本来、聖霊様によって、神様と交わる部分だった所である。 神様との交わりが途絶えたのは、人が罪を犯し、神様から独立して自分で善悪を規定しようという”原罪の性質”を持ったからである。 分裂症は、”別人格”を現わす”悪霊”による場合が多い。 これとは正反対に、人の脳は、本当の神様の霊である「聖霊様」に、これらの部分から満たされ得ることも意味している。
「霊的」なことに関与するこの部分は、それぞれ「神様」の特性の重要な部分と一致する。すなわち、
・ 「永遠」についての概念の理解、未来の啓示=「預言」、「時間を超越」する理解
・ 「意志」の分野を神様にゆだねる=「異言」、「聖霊のバプテスマ」
・ 「ことばの神」、「コミュニケーション」、「愛とあわれみ」
・ (「神の信仰」を持つ、「礼拝」)
これが、人間だけが持ち、他の動物には無い特性であり、「神がご自身に似たものとして 人を造られ」(創世記1:26)、堕罪以前のアダムとエバが 神様と交わる方法を持っていたことのあかしである。